福井市の矯正専門ドクターによる矯正に関するうんちく!満載!

スマイル博士のちょっといい歯の話【23】

 

抜歯してでもする矯正治療  その5

 

 

開咬および口元の改善(前編)

 

 

理想的な歯並びの条件として、「上の前歯が下の前歯を3〜4mm覆う。」という事も条件の一つとして上げられます(図1)。前歯で物を噛み切る事ができるからです。しかし、患者様の中には、前歯が咬んでいない人(開咬=オープンバイト)もみえます(図2)。開咬は舌を前に出す癖(舌前突癖)や上手に飲み込めない癖(異常嚥下癖)、アデノイド、顎関節の吸収(顎の関節が磨り減ってくる事)などが原因と考えられます。

 

治療としては、口腔周囲筋(舌、唇、頬などの口の周りの筋肉)のトレーニングや矯正治療により改善していきます。矯正治療として、顎間ゴム(上下の歯に装着するゴム)を使い、上下の歯を挺出(歯槽骨から歯を引っ張りだす事)する事があります(図3)。しかし、短所としては、「歯肉が見えやすくなる」、「顎関節症になりやすい」、「後戻りしやすい」事もあります。従いまして、歯肉が見えやすい人、顎関節が脆弱な人には禁忌となります。

 

 

(図1)理想的な歯並び

 

(図2)開咬=オープンバイト

 

(図3)顎間ゴム

 

 

 

 

開咬および口元の改善(中編)

 

 

(図1)開咬の方は奥歯しか咬んでいない

 

(図2)下顎頭が関節窩から引っ張られている

 

(図3)顎間ゴム

 

 

前回、前歯が咬んでいない人(開咬=オープンバイト)に対して、顎間ゴム(上下の歯に装着するゴム)で、上下の歯を挺出(歯槽骨から歯を引っ張りだす事)する治療例を説明しました。開咬は奥歯しか咬んでいない状況です。前歯辺りに上下の顎間ゴムを装着する(図1)と、奥歯が支点となります。そして顎関節の部分で、下顎の関節である下顎頭が、側頭骨の凹んだ関節となるところの関節窩から引きずり出される現象が起きます(図2)。その結果、関節部分にある靭帯や筋肉に緊張が加わり、耳の穴の前辺りの顎関節部に、痛みを感じることがあります。また、顎間ゴムを装着しなくても、開咬の方は口を閉じる筋肉である閉口筋の力により、顎関節部に下方への応力が加わり、顎関節症が起こりやすくなってしまいます。それを防ぐ為には、できるだけ多くの歯が接触できる噛み合わせを作ることが大切です。

 

矯正治療において顎間ゴムを使用するのが一般的ですが、上記の理由により、私共はできる限り長期間顎間ゴムを使用しない治療を行っています。

 

 

 

 

開咬および口元の改善(後編)

 

(図3)治療前と治療後の比較

 

口元が出ていて(図1)、前歯が咬んでいない人(開咬=オープンバイト図2)の場合、歯を抜いて前歯を舌側(中側)に入れると噛み合わせが良くなります。これは、歯を舌側に引っ張ることで、歯の根の先1/3を中心に回転移動させるためです。そうすると歯が見えている部分「上下前歯の歯冠」の先が、それぞれ歯が咬む方向に移動「挺出」し、開咬および口元が改善されます。(図4・5)
20数年前、私が大学で授業を受けていた頃は、「歯科医師は、一口腔一単位、つまり一本の歯のみを治療するのではなく、口の中全体を一つの単位として診て治療をすべきである」と教育されました。しかし、現在の矯正歯科の分野では「一下顔面一単位で治療」する時代です。顎の関節を含む、「顔の下半分の審美性、機能、歯ならび、噛み合わせ」を考慮した治療が求められています。

 

(図1)治療前の口元   (図4)図1の治療後

 

 

 

 

 

(図2)同患者様の歯ならび    (図5)図2の治療後

 

 

開咬および口元の改善(完結編)

 

抜歯する理由

 

(図1)歯と顎の大きさの不調和 

 

歯と顎の大きさに不調和(ディスクレパンシー)がある場合(図1)、それを解決するには、@歯のアーチを前に広げる(図1の↑)、A後ろに広げる(図1の↓)、B横に広げる(図1の←→)、C第一小臼歯(糸切り歯の後ろの歯○)を抜くという、4つの方があります。@〜Bの方法は、いわゆる『非抜歯』で治療をするという矯正歯科医師が選択している手法です。しかし、実際には第一小臼歯は抜かずに、「親知らず」やその前の「第二大臼歯」を抜歯していることがあります。

 

(図2)口元が引っ込みすぎている人のシルエット   (図3)図1の人の横顔のシルエット 

 

 

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